次世代ウェーハ開発への挑戦
チョクラルスキー法(CZ法)による単結晶シリコンインゴットの製造では、種結晶により直径数ミリのネック部を形成した後、そのネック部を保持し回転させながら引き上げることで、無転位の単結晶(以下「結晶」と言う)を育成します。
製造されたシリコンインゴットは、円錐状のトップ部とテール部、その中間の円柱状のボディ部により構成されます。
このうち、トップ部、テール部、ボディ外周部、ルツボ内の残原料がウェーハに加工されない原料ロスとなります。
SUMCOでは、300mm単結晶シリコンインゴットと同様の原料ロス比率を前提に、450mmインゴットを製造する際の技術的な課題を考察しました。

- 結晶重量
- 300mm結晶の約3倍、総重量約1トン前後になると予想されます。
- 300mm結晶は種結晶だけで保持し引き上げますが、450mm結晶では種結晶だけでは不可能です。
新たなネック保持手段の開発が必要となります。
- 引上時間
- 300mm結晶の約2倍の時間がかかると予想されます。
- 引き上げに長時間を要することは、結晶の有転位化(地震をはじめとする外力の影響などに起因する線状の結晶欠陥の発生)の危険性が高まります。
有転位化が発生した場合は、引き上げを中断して結晶を徐々に溶解し、改めて引き上げ直す必要があり、大幅な時間ロスと製造コストの増加につながります。
- 石英ルツボ
- 300mm結晶用よりも大きく、約2倍の製造時間に耐えられるルツボが必要となります。
- 300mm結晶用では直径32インチ(81.28cm)のルツボが主流となっていますが、450mm結晶用では直径40~44インチ(101.60~111.76cm)のルツボになると考えられます。
また、長時間の引き上げに耐えるため、ルツボ品質のさらなる向上が欠かせません。
- 熱履歴
- 300mm結晶の2~4倍の冷却時間を要すると予想されます。
- 結晶引き上げ中の熱履歴によって、COP、OSF、酸素析出物などの結晶欠陥の分布、サイズ、密度が決定されます。
450mm結晶は巨大なインゴットとなるため冷却速度が遅く、これら結晶欠陥に影響を及ぼす温度領域を通過する時間が長くなります。
その結果、結晶欠陥のサイズや密度の増大、さらには未知の結晶欠陥が形成される可能性が懸念されるため、冷却技術の革新が求められます。
このように、450mm結晶の製造には、製造装置、製造プロセスの両面での刷新が不可欠となります。
2001年から実用化された300mmウェーハでは、その表面のフラットネス(平坦度)を高精度に制御するため、両面研磨(DSP: Double-Sided Polishing)技術が採用されました。DSPプロセスはその後さまざまな改良が加えられ、デバイスの線幅微細化に大いに貢献し、現在では、線幅45nm世代のデバイスに対応できています。
しかし、450mmウェーハの加工において、現在のDSPプロセスをそのままスケールアップし適用しただけでは、フラットネスが大きく後退することが予想されます。ウェーハの直径が1.5倍になると、フラットネスのレベルは2世代前のプロセスに後戻りしてしまうことが推測されます。加えてデバイスの線幅は、今後32nm→22nm→16nmへとさらに微細化が進むものと想定されており、450mmでは22nm以降の世代に対応できる画期的なウェーハ加工技術への革新が必要となります。

300mmウェーハを東京ドームのグラウンドに例えると、その平坦度はグラウンド全体で高低差がわずか0.1mm程度しかないくらいの精度を誇ります。
450mmでは、面積が2.25倍となるなか、より厳しい平坦度が必要になるでしょう。
現時点では、450mmウェーハに対応する画期的な技術は未確立であり、より一層の研究開発が不可欠と考えています。




