SUMCOのDXへの取組み

当社は、2018年にAI推進本部を設立し、生産工程のステージごとに品質情報とプロセス情報をビッグデータ化し、これらを紐づけして、高生産性・高品質化への解析や予測をリアルタイムで行える体制を構築しています。また、製品の製造に直接関わらない設備やユーティリティのデータ等も積極的に収集して、更なるデータ活用の可能性を模索しています。こういった活動を通じて、需要の一番大きなコモディティー領域の競争力を向上させ、盤石な収益基盤の確立を図っています。

当社はデジタルトランスフォーメーション(DX)分野でもトップを走る会社を目指します。

基本方針

生産工程のリアルタイムモニタリング、自動化を実現し、市場の需要変動にも柔軟に対応できる生産体制・生産計画の確立を図るとともに、組織のアジリティー(俊敏性)を高めるべく、AI活用の領域を広げて、先端品領域の迅速なデータ解析を実現し、開発から量産確立までの生産立ち上げスピードを速めることにより競争優位性を高めます。

DX推進戦略

デジタルトランスフォーメーション(DX)による製造・開発の効率化

当社では、長年の事業活動で得られたノウハウや大量のデータ資産を基に、DXを推進しています。

戦略

これらを導入することにより、生産性向上、品質向上、安定操業等を実現し、競争力を強化します。
今後も企業のアジリティを高めるため、AIテクノロジー導入によるデジタルトランスフォーメーションを推し進め、変化する市場環境に素早く対応してまいります。

実績と達成度

AIテクノロジー・データサイエンス・IoT技術に基づく工場の生産性改善

旺盛な半導体需要に応えるべく、当社のDXは工場の生産性改善を主要目的の一つとしています。
生産部門とAI推進本部が一体となってこの課題に取り組み、設備増強の余地がない300mm主力工場において、総生産枚数で10%以上の生産性改善を実現しました。
この改善は、投資抑制効果で300億円以上、利益創出効果で年間40億円以上に相当します。

  • これは以下のような諸施策の成果です。
    • • 工場内の全装置の稼働状況・加工効率をリアルタイムに取得し可視化する仕組みの構築
    • • ラインバランス・ボトルネックを定量的に詳細把握し、加工効率向上策を集中実施
    • • 秒単位のタイムチャート解析により、装置ごとの動作バラつきを極限まで抑制
    • • 工場内の搬送実績データを詳細に解析し、物流の無駄を排除
    • • 専門エンジニアに頼っていた特殊判定について、機械学習を用いて自動化し工程滞留時間を削減
  • さらには、自律型無人搬送車と協働ロボットを生産設備と連携させる等、既存工場のスマート化にも積極的に挑戦し、労働生産性改善、従業員の働きやすさの向上に継続して取り組んでいます。
  • 全工場における工場ダッシュボードの構築
    工場から自動で収集されるデータを、経営層から現場のスタッフ・オペレーターまで、関係する各人・各層が、グラフや表によりリアルタイムでモニターすることができる「工場ダッシュボード」の内製を、全工場にて実施しています。
    300mmシリコンウェーハ工場ではすでに400以上のモニター画面があり、利用者の要望に応じて、モニター対象となる情報を日々増やしています。
    各工場の生産量、各工程の稼働状況や各品種の歩留まりなど、必要な情報をリアルタイムでモニターできるようにすることで、各種判断のために依拠すべき情報を十分に用意しつつ各人・各層の迅速な判断をサポートし、結果として、工場の生産性改善に貢献しています。

DXツール展開による業務効率化の推進

当社では、BIツール※1 やRPA※2 、ワークフローシステム※3 等、業務効率化をサポートするツールをDXツールと総称し、工場や間接部門への導入を積極的に進めています。
この結果、110,000時間/年以上の業務効率化、200,000枚/年以上の紙使用削減を実現しました。
今後も各種DXツールの導入と普及で、業務効率化に加え、製品品質の向上を進めていきます。

DX教育

当社がより企業価値を向上させ競争優位性を確⽴するためには、各業務のプロセスの⾰新を通して、その効率性を向上させることが必要不可欠です。そのためには、社員⼀⼈ひとりが、スキル向上に努め、あらゆる課題を⾃分事として捉えて、課題解決に向け、チャレンジすることが求められます。当社では、DX推進は課題解決をサポートする重要な手段であると位置付け、すべての社員がDXに取り組むことができるようDX教育に注力しています。
1)部門SE制度
工場の各部門から、非IT人材を社内留学生としてAI推進本部に受け入れます。製造・業務で必ず利用する実践的なIT・DXツールの教育・研修を実施したあと、受講者は自部門に戻り、DXを継続的に推進する中心人物として活躍しています。この制度は2021年から開始し、約30名の卒業生を輩出しました。
2)IT座談会プロジェクト
プロジェクトメンバーは間接系の各部門より推薦された社員で構成され、IT・DXの勉強会を定期的に実施しています。当プロジェクトメンバーは、学びの実践として、課題発掘から改善までのPDCAサイクルに基づきながらIT・DXツールを利用した業務改善を実施し、それに対して、システム部は伴走型でサポートをしています。また、当プロジェクトメンバーは、業務改善の成果物を所属部門に展開し、自部門内の新しい取組みにチャレンジしています。当プロジェクトは2023年から開始し、現在、1期生の業務改善を継続して実施しています。
3)全社員向けのDX教育とIT資格取得の奨励・インセンティブ
当社は、全社員のDXスキル向上を目指したDX教育を展開しています。IT・DXツールの基本的なスキルの向上はもとより、当社におけるIT・DXの必要性の理解、IT・DXリテラシーの底上げと、新しいことにチャレンジする文化の醸成を目的とした教育を実施しています。また、国家資格である情報処理技術者試験の合格報奨金を充実させ、社員の自己啓発・スキル習得に応える制度を整えています。

DX認定の取得

以上の取り組みにより、当社は経済産業省のDX認定制度の「DX認定事業者」(デジタルによって自らのビジネスを変革するためのビジョン・戦略・体制等が整ったと認定された事業者)に選ばれています。

ニューノーマル時代の働き方へのアジャイルな順応

コロナ禍以前からBCPの観点で整備されてきたセキュアな利用環境を活用し、東京地区においては、一回目の緊急事態宣言に先立つ2020年4月初から完全テレワークを実施。(2024年現在は、オフィスワークとテレワークの併用)
経営判断に関わる会議でもWeb会議ツールを活用し、導入済の電子決裁システムを用いてシームレスな経営を続けています。
今後も、新しい時代の働き方に順応し、加えてダイバーシティの高次実現を目指す施策を続けていきます。

※1 BIツール(BI=Business Intelligence)
  さまざまなデータを集積し分析を行い、現場や経営の意思決定をサポートするツール
※2 RPA(RPA=Robotic Process Automation)
  コンピューター上で行われる業務プロセスや作業を人に代わり自動化する技術
※3 ワークフローシステム
  組織内の様々な申請を電子化して、効率的に承認・回覧するためのシステム