TCFD提言に基づく開示

当社は、2021年4月に、TCFD※1提言への賛同を表明しました。
本項目では、TCFD提言に沿って、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」について開示しています。

  • ※1金融安定理事会(FSB)により設置された気候関連財務情報開示タスクフォース

1. ガバナンス、リスク管理

当社は、取締役会のメンバーである環境役員を委員長とする環境管理委員会にて、気候変動に起因したリスク及び機会をレビューし、管理すべき内容を環境目標(CO2排出量の削減、用水使用量の削減等)に設定し、その取組状況を管理しています。
また、気候変動を含むリスクは、会長兼CEO以下経営幹部が出席するBSC(Business Security Committee)において、全社方針を決定し、リスクの未然防止策を審議・決定しています。

2. 戦略

当社は、気候変動に関わるリスク及び機会が、今後、財務的に影響を及ぼす重要な経営課題の一つである、と認識しています。
そこで、財務的な影響を及ぼすと考えられるリスクと機会の予測およびその定量評価を行い、TCFDの提言に沿ったシナリオ分析を実施しました。

(1) 気候変動に関わる主なリスク及び機会

  • 対象範囲 ・・・ SUMCOグループ
  • 発現時期 ・・・ 短期:1年以内、中期:1~3年以内、中長期:3~10年以内、長期:10年超
  • 可能性 ・・・・ 小、中、大
  • 影響度 ・・・・ 小:10億円以内、中:10~100億円、大:100億円超

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分類 予測される内容 発現時期 可能性 影響度
リスク 移行
リスク
半導体分野競争の激化による販売機会の損失や調達コストの増加 中長期
炭素税(カーボンプライシング)導入による事業コストの増加 中期~中長期
循環型社会形成による廃棄物処理コストの増加 中長期
再エネ賦課金の負担増による事業コストの増加 短期~中長期
ESG投資拡大による資本コスト獲得の増加 中期
物理的
リスク
風水災による事業活動の停止 短期 小~大
風水災によるサプライチェーンの途絶 短期 小~大
機会 省エネ・再エネ高度化による省エネ関連設備の需要拡大 長期
EV普及による自動車関連製品需要の拡大 中期~長期
テレワーク普及によるサーバー関連設備の需要拡大 中期~長期
オートメーション化・データ化普及による自動化設備の需要拡大 中期~長期

(2) シナリオ分析

リスク・機会として抽出した項目は、いずれも当社への影響度が大きいと評価していますが、本年度は3項目をシナリオ分析の対象としました。(上記一覧表の青色の項目)

1) 炭素税(カーボンプライシング)導入による事業コストの増加【リスク】

当社は、GHG排出量が多く、炭素税が導入された場合、事業への影響が大きくなるため、2℃/4℃シナリオにおけるシナリオ分析を実施しました。

① シナリオ分析の前提
(1) スコープ1+2排出量

国際エネルギー機関(IEA)によるWorld Energy Outlook(WEO)2019 を基に、各国の電気事業者の排出係数を算出し、2030年排出量を予測

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2℃
[SDS (Sustainable Development Scenario)]
4℃
[STEPS (Stated Policies Scenario)]
2030年排出量 約430 千t-CO2/年 約675 千t-CO2/年
(2) カーボンプライス(以降、CP)

国際エネルギー機関(IEA)によるWorld Energy Outlook(WEO)2019 を基に、各国のCPを設定

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2℃
[SDS (Sustainable Development Scenario)]
4℃
[STEPS (Stated Policies Scenario)]
日本、米国、台湾 $100 / t-CO2 ※2 $33 / t-CO2 ※4
インドネシア $75 / t-CO2 ※3 $12 / t-CO2 ※5
  • ※2Advanced economiesの値を使用
  • ※3Selected advancing economiesの値を使用
  • ※4EUの値を使用
  • ※5WEO2019に示されている値のうち、最低額の国の値を採用
② シナリオ分析結果

約24億円/年(4℃シナリオ)~47億円/年(2℃シナリオ)の負担増となる

③ コスト削減取組案

シナリオ分析の結果、再エネ調達単価<CP単価 の場合、トータルコストが下がる事が判明したので、現在取り組んでいる省エネ活動に加えて、再エネの導入について検討を行います。

炭素税に関わるコストイメージ

炭素税に関わるコストイメージ

2) 省エネ・再エネ高度化による省エネ関連設備の需要拡大 【機会】

脱炭素社会に向けて、安定かつ効率的な電力供給や無駄のない高精度の制御を実現するパワー半導体の需要増加が見込まれます。
今後、気候変動要因によって普及が進むことが予想され、2℃/4℃の気候変動シナリオが存在する代表的な製品についてシナリオ分析を実施し、各産業分野におけるパワー半導体需要の変化について評価を行いました。

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民生機器
分野
電鉄車両
分野
エネルギー
分野
自動車・
電装分野
情報通信
機器分野
産業分野
パワー半導体の
市場規模※6
30% 数% 数% 20% 20% 20%
成長が有望な半導体搭載製品・デバイス インバーター(以下、INV)家電、ACアダプター等 電鉄車両(INVモジュール) 太陽光発電設備、風力発電設備、送電インフラ等 EV、急速充電スタンド、ワイヤレス給電システム等 サーバー電源、UPS等 モーター制御、INV制御、溶接機械などの高電圧・大電流用途
シナリオ分析の対象製品・設備 エアコン 電鉄車両 太陽光発電設備、風力発電設備 ECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット) 本分野に関わる適切な気候変動シナリオがないこと、および製品・サービスのサイクルが他分野よりも早く、中長期の予測が難しいことから、分析の対象としなかった 製造工場全体のエネルギー効率
2030年における2℃未満の世界に向けたパワー半導体需要の変化 4℃(成行きの世界)に対して、INV搭載の高効率エアコンの生産台数は約1.3倍と試算
INV搭載エアコンの生産割合も高まると予想
移動距離あたりのCO2排出量が小さい鉄道の移動需要が伸長
4℃(成行きの世界)に対して、鉄道車両の生産台数は約1.2倍と試算
発電設備・関連製品に搭載されるパワー半導体の数量予測は困難だが、グローバルで太陽光発電、風力発電の導入量は4℃(成行きの世界)に対して約1.5倍と試算 車載半導体デバイス全般を対象にシナリオ分析を別途実施
(「EV普及による自動車関連製品需要の拡大」を参照)
本分野の個別設備・製品に関する気候変動シナリオがないが、製造業のエネルギー原単位は、省エネ化・高効率化により、4℃(成行きの世界)に対して、約7%減少すると試算
2℃未満の世界への移行に伴う当社の事業機会 温暖化や気象の両極端化によるエアコンの生産台数の増加に伴い、当社製品需要に好影響をもたらすと予想 市場規模は小さいものの、モーダルシフトによる電鉄車両の需要増に伴い、当社製品需要に好影響をもたらすと予想 市場規模は小さいが、グローバルでの再生可能エネルギーへのシフトにより、パワーコンディショナー等の生産台数が増加し、当社製品需要に好影響をもたらすと予想 本分野の製品・サービス需要に影響を及ぼす直接的な気候変動要因がないと考え、 2℃・4℃のシナリオによる本分野のパワー半導体需要の差は小さいと評価 工場での省エネ化・高効率化の進展等によりパワー半導体需要が高まり、当社製品需要の増加が見込まれる
次世代パワー半導体の普及に伴う当社の事業機会 現在、開発・実用化・低コスト化が進んでいる次世代パワー半導体(SiC、GaN等)は、2030年に向けて市場が大きく拡大することが予想されていることから、今後も次世代パワー半導体の普及状況を注視し、開発を継続するとともに、能力増強をはかる。
  • ※6調査会社予想データを基に設定

3) EV普及による自動車関連製品需要の拡大 【機会】

当社では、車載向けウェーハ需要の予測にあたって、将来のEV/HEVの生産台数の割合を下図のように推定しています。
右図の「新シナリオ」を2℃シナリオ、左図を4℃シナリオ(成り行きの世界)と見なし、車載半導体に使用するシリコンウェーハの車種別の面積(予想)と生産台数の割合を乗じて、2030年までのシリコンウェーハ需要の推移を分析しました。
その結果、2030年のシリコンウェーハ需要は、2℃/4℃いずれのシナリオにおいても、2020年比2倍以上、更に2℃と4℃のシナリオの世界を比較すると、2030年時点で、4℃シナリオに対して、2℃シナリオの需要は約1.1倍と試算されました。
自動車・電装分野は、自動運転や表示機器の電子化等による車載半導体需要の高まりがベースラインとして予想されますが、脱炭素化に向けたEV・PHEVの普及によって、更に需要を押し上げる効果が確認され、当社製品需要に好影響をもたらすと予想します。
そのため、今後も高い信頼性と耐久性の開発を継続するとともに、能力増強をはかります。

EV普及による自動車関連製品需要の拡大

  • 本シナリオ分析は、外部調査会社の協力を得て、外部情報の収集、分析を実施しました。

3. 指標と目標

当社は、環境目標の一つとして「CO2排出量の削減」を設定し、CO2排出量の削減に取り組んでいます。
また、その活動実績も公表しています。